やなぎみわが「大阪ならでは」の作品を展開
国内外で活躍中の現代美術作家やなぎみわが、1990年代に制作し、国際的評価も高い写真作品「案内嬢」シリーズをもとに、大阪で新しいプロジェクトを実施。今回は、「案内嬢」の新たなシリーズとして、2011年から12年にかけて制作された演劇作品の流れを継承し、案内嬢による大阪ならではの話芸(浪曲等)を交えた映像作品を、中之島周辺の近代建築を舞台に制作・上映した。
【制作のページ】
本プロジェクトは、やなぎみわプロデュースの「鉄道芸術祭・駅の劇場」で行われた様々なプログラムのひとつとして制作・実施された。「駅の劇場」は、一般公募で選ばれた「案内嬢」に対して長期にわたりワークショップを実施し、演劇作品の上演等を行うものであったが、本プロジェクトは「案内嬢プロジェクト・大阪編」と題し、案内嬢が近代建築を舞台に朗読劇を展開する模様を映像作品としたものとなった。
映像制作の舞台は当時の姿を今もそのまま残す近代建築の「芝川ビル」と「堺筋倶楽部」。それらを舞台に、萩原朔太郎作の「日清戦争異聞」を案内嬢たちが浪曲等の抑揚で朗読しながら繰り広げられる、ラジオ劇のようなオリジナル作品を映像にまとめた。
【作品展示のページ】
映像の公開は芝川ビル(12月2日)と、「駅の劇場」のメイン会場であるアートエリアB1にて行われた(12月4~21日)。12月2日はプレミア上映会と称し、撮影が行われた芝川ビルの一室で、作者自身が作品コンセプトなどを語るトークショーと合わせて披露された。
萩原の作品の舞台となった時代の意匠を色濃く残す近代建築で、ラジオ劇のような趣で繰り広げられる映像を見ていると、自分自身もその世界の一部になったような錯覚を覚えるひと時であった。質の高い近代建築や大阪ならではの話芸等との巧みなコラボレーションによって、大阪の歴史性や文化が新しい形で継承され、息づく作品となった。
アートエリアB1での上映風景
芝川ビルでのトークショー