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2016.09.29

interview「『生と死』という対極を表現している」Yotta

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9月10日、22時の淀屋橋のカフェでYottaのおふたりにお話をお伺いしました。作品は第二次大戦中に人々の空腹を満たすために製作された「ポン菓子機」をモチーフに、「大砲型ポン菓子機」を車両に積載し、「爆発」することによって食べ物をつくる《穀(たなつ)》です。この作品は、「生と死」という対極を表現しているとのこと。展示場所である、万博記念公園は、1970年の万国博覧会の跡地を整備した場所であり、万博当時、この場所に今となっては公園のシンボルといえる《太陽の塔》を打ち建てた、岡本太郎さんの“対極主義”から発想したというこの作品について、お二人にインタビューしました。

ーー今回ご応募されたきっかけは、どんな理由でしょうか?

木崎さん(左) 僕たちは第18回岡本太郎現代芸術賞の岡本太郎賞を受賞させていただき、今年、作品を岡本太郎記念館で展示させてもらったんです。(注:《穀(たなつ)》の大砲部分をインスタレーションの一部とした作品展示を今年6月に岡本太郎記念館で行った。

岡本太郎賞受賞Yotta 新作展示「吉報の夜明け」(参考記事)

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Yotta ”吉報の夜明け” 2016年 岡本太郎記念館での展示風景

山脇さん(右) 第18回岡本太郎現代芸術賞の1年後に岡本太郎記念館での展示が決まっていたので、その1年の間に、岡本太郎さんのことを調べました。その中で《穀(たなつ)》という作品を着想しました。

木崎さん そして今年のおおさかカンヴァスの会場が万博記念公園と知ったので、《穀(たなつ)》の大砲を打ちたいなと思ったわけです。


ーー何がきっかけで大砲に見立てたのでしょうか?

木崎さん 流れでいうと、《イッテキマスNIPPON シリーズ“花子”》や《金時》もそうですが、なんかいいよね、というのものがあったりするんです。焼き芋屋とか、ポン菓子とか、昔あった思い出とか、記憶の中でこれいいよね、というモチーフが多いかな。

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山脇さん ポン菓子屋さんが好きなんです。小さい頃来てませんでした? 地元の吹田市では団地に売りにきていました。お米を持っていくとポン菓子にしてくれるんです。トラックに積まれた機械がパンと鳴って、ポン菓子が散らかったりしていた記憶があります。デコトラも焼き芋も、小さい頃に僕らが好きだったものです。こけしもおばあちゃんの家にありました。盆踊りもそうかな。それらには、僕らの子どもの頃の原風景が残っていて、作品のテーマにしています。

木崎さん 僕はポン菓子は公園の隅っこで、すでにできあがったものを買って食べていた記憶がありますね。

山脇さん ポン菓子の作品をつくりたいというアイデアは5年ぐらい前からずっとありました。調べていくと、ポン菓子機は第二次大戦中、日本中が食糧難の中、自分の生徒にお米をたらふく食べさせたいという教師の想いから生まれました。図書館の本で知った(海外製の)穀類膨張機のアイデアを持って、鉄の町だった八幡市(北九州市)に行きました。軽量化やさまざまな工学的実験をし、武器も作っている工場にポン菓子機の図面を見せながら作るように頼んで、国内第一号が生まれ、今に続いているんです。当時は、武器も、ポン菓子機も同じ工場で造られていて、まるで工場の中に食=生/大砲=死という「対極」の構造が内在しているように感じました。


ーー車に搭載するイメージはどこから出てきたのでしょうか?

木崎さん イスラム国のテクニカルからですね。正規軍隊ではない民兵が生身で戦うためにTOYOTAのランドクルーザーやハイラックスなどのピックアップトラックに武器を積んで戦うのですが、その改造車両をテクニカルと呼んでいて。このスタイルが結構メジャーなんです。イスラム国に限らず、湾岸戦争のあたりから、中東・アラブ圏では。

山脇さん 戦車やジープに乗れない民兵も、比較的安価に入手でき、丈夫で強いTOYOTA車なら乗れるので。

木崎さん だから、その光景から”TOYOTA WAR”(トヨタ戦争)と呼ばれたりしています。ちょうど制作の時期に「IS」のことが話題になっていて。販売ルートはどうなっているんだ、とアメリカから日本が責められたりした時期です。

山脇さん TOYOTAの真っ黒の車が列をなしているわりと話題になった画像があるんですが、私たちは戦争に関わりを持っていないですが、そんなふうに形を変えて戦争に加担している。そういう状況をテーマに考えました。

木崎さん 岡本太郎自身も直接的な反戦表現はしなかったけど、運動として「殺すな」があったり、壁画作品《明日の神話》も戦争が背景にあって。岡本太郎記念館の展示では、《明日の神話》の明日を考えるインスタレーションを作りました。


ーーポン菓子の機械を搭載する車は改造車になるのでしょうか。

木崎さん 《金時》は、荷台に装飾パーツを載せているだけで改造車ではありませんでした。

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《穀(たなつ)》では、センチュリーとハイラックスをミックスしたようなカスタムを施します。もちろん違法改造ではなく、公道を走行できるカスタムカーです。

ーー作品制作はどんな状況でしょうか?

木崎さん 大砲は7割完成しています。舞台美術など手がけられている友井工芸さんと一緒に作ってもらっているのですが、改良を加えて精度をよくしていっています。車は現在探しているところで、なんとなくの目処はついています。(注:インタビュー当時。現在はすでに見つかって制作中。)

ーー車種のこだわりはありますか? 先ほども名前が出ていましたが、《金時》の場合も、センチュリー(TOYOTAの車種)でしたね。センチュリーを選ばれる理由はあるのでしょうか?

山脇さん センチュリーは権威的なものの象徴なんです。社長や政治家・・・みたいな。その権威的な象徴である車に労働的な象徴として焼き芋製造機を乗せる。労働と権威という相反するものをミックスさせ、共存させている、こういった対極的なものが面白いなと思っているんですよね。

ーー大砲はどんな仕組みなのでしょうか?

木崎さん 蓋をして7合ぐらい米を入れて、ぐるぐる回しながら温めていき、温まると圧力がかかります。圧力がかかると水分は蒸発できず、1メガパスカル、気圧で言うところの10気圧あたりで米の細胞の水分が一気に蒸発するからポン菓子が膨らみ、ポンと音がなります。

ーー蓋をあけるのは手動ですか?

木崎さん 今のところ手動ですが、のちのち電動にしようと努力しています。

山脇さん カナヅチでなぐるんです。蓋が開いた瞬間に米が蒸発してパンと音が鳴ります。石巻で大砲の部分だけ持っていって。20発ぐらい打ちました。蓋が飛んで、クランプで止めたのですが、クランプが飛びました。相当な力です。


ーー今回のおおさかカンヴァスで叶えたいことはありますか?

木崎さん 本当は、蓋なしで大砲を打ってみたいです。それをすると、まあ8割ぐらいの米が飛び散っていくので、下に相当大きなシートを敷かないといけないですね(笑) 雨の場合は難しいのですが、会場では、週末を中心に、実際に大砲型のポン菓子機でポン菓子を作る予定です。観客の皆さんにも味わっていただけるように、現在準備を進めています。秋晴れを祈りつつ、楽しみにしていてください!

*ポン菓子を作るパフォーマンスは土日を中心に随時行う予定。パフォーマンス時間は会場でチェックしてみてください。