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artistreport

2016.12.06

interview「真意を読み取って岡本太郎を継承していく必要がある」犬伏雅一先生

大阪芸術大学芸術計画学部学科長の犬伏雅一先生に、シークレットだった作品「命根樹立(めいこんじゅりつ)」展示後の感想を聞かせていただきました。


ーー作品のコンセプトにつながる経緯を教えてください。

昨年は中之島で展示し、今度は太陽の塔周辺とのことでしたが、太陽の塔はモニュメントとして定着していて、たくさんの人が集まってくる場所ですね。そこで大阪府自体がアート部分でプレゼンスをしたいことは理解できますし、大阪芸大の場合も賛同したわけです。作品展示にプラスするかたちで、私の学科(芸術計画学科)の学生が現場で動いて、企画だけでなく運営についていろいろ体験になればプロデュースの学びの上でも彼ら彼女らにとって大いにプラスになるという思いです。

もうひとつは、岡本太郎という人の事績や考えは、意外ときちっとは理解されていないですね。私の前後の世代は岡本太郎は目玉を向いて「芸術は爆発だ」のCMでお馴染みの変人であるという意識です。しかも、1970年に二十歳前後で芸術や社会に関心のあるものは、万博に参加するアーティストや万博そのものに否定的な見方をしていたものが結構多かったんですよ。


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ーー当時はそんな評価だったんですか?

ええ。岡本太郎なんて最悪だというのが当時の若い人たちの一部の考えでした。ただよくわかっていなかった。一番の問題は「岡本太郎はどんなことを考えて動いていたかをまったく知らなかった」ということなんです。

今回のカンヴァスへの参加にあたって太郎の事績を徹底的に調べ、彼の書いたものを手に入る限り読んでみると、ある意味太郎がポストモダニズム的であることに驚きました。対立する考えを調停して落としどころを探るという、日本的ですか、いやそうでもないですかね、とにかく太郎はこれを拒否する。対立するそれぞれの局を下手にまとめるという姑息なことをせず、対立に深く根差すある種の爆発力や想像力を岡本太郎は引き出そうとしてたんですね。この姿勢、彼呼ぶところの対極主義の意味が著書やフランス時代の彼の交友関係を見ていって非常に明快にわかったんです。

彼は単純な二項対立で大阪万博を捉えていたのではなく、もう少し広いコンテクストで捉えようとしていました。私たちは太郎の真意を読み取って岡本太郎を継承していく必要があると考えました。

しかしながらストレートに作品を実現する時間的余裕もないので、その思いを継承しオマージュして、未来へ一種の投射をするというかたちで「生命の樹」をつくりました。思いを具現化するのが私たちのできる選択肢かな、と考えてあの作品を選択しました。


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ーー犬伏先生自身、体調が悪い中で初日にお越しいただきましたが、ご自身の感想としてはどうでしょうか。

心情的には「太陽の塔を振り向かせる」ことができたかなと思います。しかし作品ボリュームからすると、太陽の塔があまりにも圧倒的なので、そこの部分は岡本太郎さんごめんなさいという感じです。

本来はせっかく読み込んだ文献資料を活用してA3の刷り物をつくる予定でしたが、体調が悪くて作業できなかったのが心残りです。刷り物は広い意味での人物相関図を考えていました。岡本太郎のポジショニングがビジュアル化できるようなものと、若干抽象的ではあろうけど太郎の文言をこちらの解釈で処理しなおしてつくろうと思っていました。


ーー大阪芸大芸術計画学科の学生さんといっしょに運営されたことに関するご感想を聞かせてください。

学生が現場で動き回れて、ポジティブな面やネガティブな面など、それぞれの視点からいろんなことが学べたのではないかと思います。そういう意味では、大阪芸大としてはこの種のイベントに継続的に今後も絡んでいければと思います。継続するためには、学生が有意義に活動できるような仕組みをきちっと構築していきたいですね。