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artistreport

2016.09.26

interview「岡本太郎さんの『明日の神話』を下敷きに、自分たちでつくりかえようという思いから「◯△□の神話」というタイトルに」種(天王寺学館高等学校芸術コースを中心とした若手美術集団)

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9月9日、天王寺学館高等学校にてのコアメンバーである代表の宮本知実さんとseedちゃん、佐藤隼先生にお話を聞かせていただきました。彼らは岡本太郎さんが描いた巨大な壁画「明日の神話」をモチーフに、高校生を中心とする100人規模の制作者で大型絵画を制作します。現代の若者の“今”の想いを描き込んだ作品。さてどうなるのでしょうか。


ーーどういった経緯でおおさかカンヴァスにご応募されたのでしょうか?

佐藤隼先生(以下、先生) 私自身がおおさかカンヴァス2011で作品を発表した経験があり、箕面公園昆虫館で虫を扱った作品を出展しました。その後もおおさかカンヴァスに個人的に応募したり、昨年も生徒とともに応募していました。今年の募集要項に太陽の塔が掲載されているのを見てすぐに「もし選ばれたらここで展示できるんだ!」とわくわくしました。宮本さんとseedちゃんのふたりに見せて「どうする?」って聞きましたね。

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代表の宮本知実さん(以下、宮本さん) 去年の文化祭「天学祭」でライブペインティングを行ったのですが、岡本太郎さんの「芸術は爆発だ!」にあやかり、「天学祭は爆発だ!」というコンセプトで作品をつくりました。反響がすごくて展示部門も一位をいただきました。岡本太郎さんの言葉を引用した流れもあり、今回のおおさかカンヴァスが太陽の塔が舞台だったので「ぜひやりたい!」と思いました。

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先生 私達の高校の仕組みは少し変わっていて、わたしが担任をしているF組芸術コースは1・2・3年生がひとつのクラスなんですよ。

宮本さん 30人ぐらいのクラスです。教室の一面の壁に紙を貼って、そこに作品を描きました。2日間、一日8時間ぐらいかけながらの作品づくりです。自分が描いた絵を別の人につぶされるという事件も起こりながら、作品の上に作品を重ねていくような描き方をしました。自分の描いた部分が新しく変化していく楽しさも感じました。


ーーキャラクターのseedちゃんにはどのようにして生まれたのでしょうか?

先生 僕が虫の死骸をよく作品に使っていまして、マスコットをつくるなら虫がいいなと思いました。学校のホームページなどで生徒の写真を使用するときに、顔がはっきり写っていると困ることもあるので、広告塔としてのキャラクターをつくりました。

宮本さん F組はピンクがキーカラーなのでピンクを取り入れています。よくうさぎに間違われるのですが、蜂のキャラクターなんです。


ーーなぜseedちゃんというネーミングなのでしょうか?

宮本さん 自分たちはまだ未熟な高校生なので種(seed)に見立てました。自分たちが動き、関わっていくことで、栄養となり、芽を出すことができるイメージです。

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ーー今回の作品についてお聞きかせください。

先生 企画の当初は絵の具を詰めた大砲を打って、など考えていたのですが、打ち合わせを重ねて最終的には大きな絵を万博記念公園駅に設置するプランに落ち着きました。岡本太郎さんの「明日の神話」を下敷きに、自分たちでつくりかえようという思いから「◯△□の神話」というタイトルで考えました。


ーー◯△□というのはどういう意味なのでしょうか?

先生 江戸時代の掛け軸に残っているのですが、意味がわからないものの例えとして語り継がれています。若者たちは、はっきりしたものをわからないまま生きていて、そのありのままを伝えていこうというのが趣旨ですね。

宮本さん 種は本学の生徒に限らず、大阪府の高校生や中学生などに声をかけてメンバーを募っています。美術に特化している学校だけでなく、すべてに声をかけていまして、絵のスキルなどは関係なく、学外の方も巻き込んで種をふやしていき、100人規模でひとつの作品を描きたいと思っています。


ーー種のメンバーはさまざまな場所で作品展をされているのでしょうか?

先生 今年の9月末にenocoで開催する「第1回 種展 – 今をみせる –」がはじめてです。

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展示は、空間自体をひとつのテーマに沿った作品にしたいと考えています。みんなの作品がごちゃまぜになっているイメージです。
宮本さん コンセプトをみんなで話し合ってつくっています。

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先生 いろんな意見があって、収集がつかない状況をあえてつくっています。今回の「◯△□の神話」もみんなでわちゃわちゃとつくって、お客さまが見てもわからないことをあえてやっています。種というアーティストも何人になるか今のところわからないです。


ーーどんなふうに打ち合わせされているのでしょうか?

宮本さん 匿名でアンケートをとって、それを見てみんながいいなと思うところに線をひいたりして、みんなで見ながら自分たちはどうしていきたいのかを考えています。“青春”みたいな安っぽいことばでは片付けられない、現代の若者の“今”をどのようなかたちで発信していけるのか。常にみんなで考えながら打ち合わせを重ねています。

先生 文化祭の時に、図案も決めていない状態で制作をはじめたので、作品の全体像が全然まとまらなかったという反省がありました。なので今回はきちっと図面もつくって役割を決めて制作していこうと思います。


ーーおおさかカンヴァスで叶えたいことはどんなことでしょうか?

先生 「明日の神話」が東京の渋谷駅に展示されているように、「◯△□の神話」も駅に展示させてもらいます。また、太陽の塔の間近でもあるというすごい場所を与えてくださっているので、岡本太郎さんと距離的にも歴史的にも近づきたいと思います。生徒はひとつの成功体験を発揮できる場だと思います。

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宮本さん 実現しようと思っても学校内では無理な話なのでとても楽しみです。大きいキャンバスを用意してもらえることや、大きいキャンバスを自分たちで組み立てて張るという作業もはじめての経験で、キャンバスの生地に防炎シートを使ってるんですけど、この上からでも絵が描けるんだ!など新しい発見も多いです。学校では甘えられる環境がありますが、おおさかカンヴァスという冠の中では甘えは許されないと思うので、やりきれるように頑張りたいと思います。