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2014.10.10

LEM空間工房
世界のまちあかりを知り尽くす、照明デザイナーの長町志穂さんにお話を聞きました

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(写真右端)LEM空間工房 長町志穂さん

今回のおおさかカンヴァスの舞台である、御堂筋で「御堂筋イルミネーション」の照明デザインをされた長町志穂さん。そんなゆかりのある御堂筋で作品を展示することについてお聞きしました。


世界のまちあかりイベントはどんなものがありますか?

「海外では、おもしろいあかりのイベントがたくさんありますよ。フランスのリヨンやドイツのフランクフルトなどが有名です。公共の銅像があかりのオブジェに変身したり、美術館や博物館の中で、展示物といっしょにアーティストが作品を披露したりしているんです。日本じゃ考えられないですね」。


今回、御堂筋が舞台ということについてどう思われますか?

「おおさかカンヴァスが今年はいよいよ御堂筋だと聞いたときは『本当に?』と思いました。パブリックアートにもっとも向いているけど向かない道なんで(笑)。世界最大に厳しい場所だと思っています。5年も『御堂筋イルミネーション』にずっと関わっていたのですが、警察協議を何度もやっていますので、ここでパブリックアートをするのは大変だろうと思っていました。御堂筋は彫刻の道ですが、御堂筋にあるタイプの彫刻は古典的なアートでしょ。世界のワクワクするパブリックアートはもっと現代的なものが多いし、近現代のオフィス街の御堂筋には本来は向いていると思うんです。なので、ここを舞台にするのは、いいアイデアというか必要なことだと思いました」。


警察協議ってそんなにたいへんなんですか?

「御堂筋のイルミネーションもこの5年間で膨大な数のアイデアスケッチや企画案を出してきましたが、国道でもあった大幹線道路である御堂筋沿線でお蔵入りしているものがたくさんあります。作品を出すためには例えば実験をして見せる必要があります。でもアート作品というものは実験そのものが作品じゃないですか。許可をとるために作品を何度もつくって見せにいくのは難しいですね。日本国内の他都市では大阪の感覚でヒヤヒヤしながら協議しても、ほとんど突破できます。それだけ御堂筋は特別だと感じています」。


北御堂、本町ガーデンシティを選ばれた理由はどういうところですか?

「御堂筋は標本箱というか、建築ミュージアムみたいな場所です。北御堂はコンクリートづくりの仏閣という意味で個性的です。昭和の建築家・岸田日出人設計です。御堂筋の都市空間にフォーカスされるストーリーがいいと思いました。本町ガーデンシティは今の時代の突破口だと思います。御堂筋初の高級ホテル・セントレジスが入っており、高層を許可する代わりに、にぎわいのための大きなパブリック空間を創ったのです。御堂筋を活性化したいという願いがこもっているので、そこがいいと思いました」。


パブリックアートは絶対に必要なもの?

「現代の文化を物語る要素という意味で、欧米では今の思想をあらわすものとして必ずパブリックアートはまちにあるんです。みんなが楽しくて、触ったり写真をとったり、ちょっと笑ったりほほえんだりするきっかけになるもの。そういうものがちゃんとつくられていて、アーティストも育っています。クールなものではなく、フレンドリーなものでまちにとけ込んでいる。それを見るために、わざわさ訪れる楽しい場所とか、公園とか遊歩道とか、もっと人にフレンドリーな場所が大阪にも増えてほしいと思っています」。