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2015.10.09

スイッチ総研
カンヴァスちゃん、アーティストに話をきくの巻(スイッチ総研編)

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(所長の光瀬指絵さんと副所長の大石将弘さん)

スイッチ総研さんはニッポンの河川という劇団に所属する女優、光瀬指絵さんと、ままごとという劇団に所属する俳優、大石将弘さんからなるユニット。ふたりはどんなきっかけでスイッチ総研をはじめたのだろうか。

「その説明をすると長いですよ(笑)。横浜みなとみらい21にある象の鼻テラスで開催された劇団「ままごと」のイベントに私が客演として参加したのがはじまりです」(光瀬さん)




ままごと「Theater ZOU-NO-HANA 2014」の上演映像
3分3秒から「象の鼻スイッチ」(撮影=池田美都)


「象の鼻テラスは、いろんな人が通り過ぎる場所、くつろいでいる場所。そこでどんなことをしたら面白いか、俳優がみんなで考えてどんどんアイデアを出しました。歌やダンス、ラジオドラマ、紙芝居などいろんなアイデアが出て、それぞれの班にわかれたんですけど、僕や光瀬さんは、やっぱり演劇がやりたいとなりました」(大石さん)

「劇場ではない場所で演劇をやるにはどうしたらいいんだろう。演劇って他の表現に比べて圧(あつ)が強くて迷惑にもなりうる。ではどうしたらいいかと考えて、『スイッチを押したらはじまりますよ』という形にして、押した相手にだけ上演するのはどうだろうと。押さなければ何も起こりませんよ、という。そういう形の演劇をつくってみることにとなり、それをスイッチと呼んでいました」(光瀬さん)

一般的に演劇は通行人が自分に演技を向けられると気恥ずかしいものだ。そのためにお客さまへの声の掛け方にも細心の注意を払っていると光瀬さんは言う。当時、スイッチをつくるチームは5、6名だった。楽しくやりがいがあったと語る。

「「ままごと」は、2013年に瀬戸内国際芸術祭に参加してから、小豆島で継続的に滞在制作を行っています。2014年にままごとの代表の柴幸男が別の仕事で参加できない時期があった。でもスイッチ班だったら俳優だけで面白いことができるのではないか、小豆島でスイッチを上演するのは面白いのではないかという話になりまして」(大石さん)

「それで大石さんが声をかけてくれて俳優4,5名のチームで小豆島に行きました。わたしたちが滞在した小豆島の坂手という地域は、300世帯ぐらいの町で、普段は人通りも少ない。真夏だったので昼間はめちゃくちゃ暑くて誰も出歩いていない。この場所だったらどういうことをやれば面白いか。何をしたら成立するかなとメンバーと相談しました。例えば、コップに水が入っていたらどう? 水を注いでくださいというスイッチだったら何が起これば面白い?など話し合いました。それで、コップに水を注ぐとランナーが走ってきて、給水して走り去るという作品が生まれました。ほかにもいろいろなアイデアを出し合って形にしていきました。こうやってくだらないことを考えるのが楽しいんです」(光瀬さん)

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自分たちが楽しいだけでなく、「大人げないことを大人のやり方で」やるというのが我々のモットーだと続ける。

「芸術祭に参加した以上、芸術とは何なのかじっくり考えました。きっと、『なんなの? どういうつもりなの?』というものに対して、 意味がわからないけれど感動してしまうものだと思うんです。泣いて土下座したくなる感じ。演劇のように終われば消えてしまうものを本気でやっていることがいいなあと思っています。好きなことを大人のやり方でやりたい。きちんと成立させたいと考えているんです」(光瀬さん)

そんな折りに冒頭で出てきた象の鼻テラスのスタッフの方にこんなアドバイスをもらったらしい。

「この公募(=おおさかカンヴァス2015)を薦められました。コンセプトを読んで面白いと思ったし、大阪という町でスイッチを上演できることにも惹かれました」(大石さん)

「まちと戦うというコンセプトって私たちにぴったりだよねと言って。応募するなら実際に場所を見たいと思って、大阪に下見に来て、本当にできるのか、やりたいと思える場所があるのかと一日中散策しました。町中を歩きながらアイデアを出し合って、最終的に道頓堀をウロウロしているときに”とんぼりウォーク”にたどり着いたのですが、この場所でぜひやってみたいとふたりとも感じました」(光瀬さん)


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すでに持っているネタをどこかに置くということはできるけれど、それはやりたくない。もとからそこにあるものを使って新しいものをつくりたいとふたりは考えている。カンヴァスちゃんは驚くほど真面目なふたりだと感じた。

そもそもふたりがスイッチ総研を結成したのは2015年1月。オールナイトの芸術祭として有名な六本木アートナイト2015の公募に応募したのがきっかけだった。


「公募に出すためには団体が必要だったので、急いでスイッチ総研をつくりました。」(大石さん)

「六本木アートナイトは、主催に東京ミッドタウンや森ビルなどさまざまな企業が参加していて、携わる中で、思惑がそれぞれ違うんだとわかったんです。あくまでもわたしたちは自分たちの信念にぶれずにやろうと。それで、演劇ってかっこいいなと思ってもらいたい。わたしたちが信じるものを貫いて、こんな面白いことをやるなんて六本木の街は器が広いなと見た人に感じてもらうことで、自分たちがやりたいことだけでなく、それぞれの思惑を満たしたいと感じました。意地やプライドもあるし、恥ずかしいことはできない。100人中、99人の方が面白く感じても、1人が気恥ずかしい思いをしたら演劇の敗北だと思っています。おおさかカンヴァスでもその思いは変わりません」(光瀬さん)